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井上敏江のき・ものろーぐ
すゞし好みきもの de GINZAクルージング
井上敏江き・ものろーぐ 井上敏江き・ものろーぐ
  きものが大好きで、買う立場から提案する立場へ転身して早6年ほどが経ちます。この間、銀座のギャラリーでの展示販売を経て、5年前には千葉県浦安市に「きもの すゞし」を開店。きものを通してお客さまをきれいにしたい、その一心でやってきました。創業5周年を迎えるにあたり、私自身のきものに対する思いや「すゞし」のプロフィールを振り返ってみたく思います。
もともときものは好きで、結婚してからも機会があれば着ていました。でも主婦して、家事や子育てに力は抜けません。きものから離れ、主婦業に専念する日々。息子の成長にともなって、42歳のときには会社勤めを始めました。まあ、たいていの家庭と同じですね。
 
井上敏江き・ものろーぐ
 
着付け学院のお友達と
着付け学院のお友達と
何事もこうと決めたら突き進むタイプですから、会社も主婦の仕事も一生懸命。それが、10年ほど経った頃でしょうか、買い物に出たときのこと。きもののチェーン店の前を通りかかったんです。
「まあ素敵!」と感じるや、きものを買ってしまったのでした。
そのときは気晴らしのつもりだったんですが、きもの熱は高まる一方で……。
10年分のストレスがきものを買わせた、そんな感じ。でもよくよく考えれば、きものそのものが人を癒し、豊かな気持ちにさせてくれる衣服なんですよね。
 
井上敏江き・ものろーぐ
  ところがある時点から、そのチェーン店の店員さんが薦めてくれるきものも接客の仕方も、私の気持ちとズレるようになったんです。「すゞし」のきものもそうですが、私は色柄がたくさん入っているきものは好みじゃありません。主張が強すぎて、遊べないというか……。
そんな折に出会ったのが、町中の専門店さんでした。年齢的にも留袖が欲しくなり探していた頃だったので、思い切って暖簾をくぐってみたんです。
すると、どうでしょう、そのセンスの良さときたら。いろいろと見せていただいたんですが、その中にあった1枚を見て時間が止まりました。シンプルで上品な紬の訪問着!感動した私は、留袖ではなく、その紬を購入したのでした。この出会い以来、私のきもの人生は「一から出直し」。着付け学院にも通い始め、基本からきものを学びました。
 
井上敏江き・ものろーぐ
 
変身の日
見ている間に変身していく姿を見ると本当に嬉しい一時です。
ただ、着付けは堅苦しいルールを押し付けることではありません。きものを気持ちよく着るための最低限のルールはあるとしても、あくまでそれぞれの個性を表現することが大切です。
きものは、洋服と同じく、ファッションなんです。ファッションが画一的じゃ、おもしろくないですものね。だから私は、一人ひとりのお客さまの個性を引き出す、トータルコーディネートを大事にしています。でも着姿を「きれいに」「かっこよく」見せるためには工夫が必要です。
そうした工夫の楽しさをサポートするのが、「すゞし」の仕事だと思っています。
そんな思いから、「すゞし」では毎月1回、お客さまのきものコーディネートを、ヘアメイクも含めてトータルにアドバイスする「変身の日」を設けています。お客さまとともに、きもののおしゃれを工夫しながら創り出すひとときです。私自身の勉強にもなっています。
 
井上敏江き・ものろーぐ
  ついつい話がそれてしまいました。行き着けの専門店さんができた私は、まさに水を得た魚のようでした。ところが間もなく、折からの不況やきもの離れが進む中で、そのお店が廃業に……。
店主にいろいろとお話を伺うと、お客さまがせっかく仕立て上げたきもので、取りにいらっしゃらずそのままになっているものがたくさん残っているというんですね。見れば趣味のいい商品ばかり。
「眠らせておくにはもったいない」
それが率直な感想でした。そこで廃業なさる前に、私が引き取ることを決めたんです。私はやっぱりきものが大好き。着るのはもちろん、もっとたくさんの方に素敵なきものを着ていただきたい!この思いは強くなるばかりです。
銀座のギャラリーのショーウインドウディスプレイ
十仁病院の一階だったためガラスに
十仁病院の文字が大きく入っている
十仁ギャラリー時代
銀座四丁目交差点和光前
さっそく、銀座のギャラリーで、私が本当に素敵だと思うきものを展示してみることにしました。そうしたところ、これを譲ってほしいという方が続々現れ、展示したきものは半年間で完売に。自分で買い取って値段をつけたので、いい物がリーズナブルだったんですね。
 
井上敏江き・ものろーぐ
 
佐々木君枝さん
佐々木君枝さん
ギャラリーでの展示は、隔月で10〜15日間。それ以外の日に商品を買い揃えていきました。業界では新参者でしたが、それでも商売ができたのは、良いご縁があったからだと思います。
コーディネートを大事にしたいとお話しましたが、そのためにはセンスの良い小物も必要。この頃は、こだわればこだわるほどなかなか良い商品に出会えず、多少の行き詰まりも感じていました。それでもとにかく、良いものを探しに人形町へ行ったときです。運命的とも言える出会いに恵まれたのでした。
あるお店のウインドーに素敵なお人形や、手づくりのハンドバッグが並べてあるのが目に入りました。それでそのお店に入ってみたんです。仕入れの交渉もスムーズに進み、ひと安心していると「こんなものもあるんですよ」と手渡してくれたのが、何と紬(実はこのお店、歴史ある紬の問屋さんだった!!)。このとき私のお相手をしてくださったのが、佐々木君枝さんでした。
彼女から橋爪オリジナルの「越後上布」や「駒生布」、「山繭紬」を見せていただき、大感激。見せていただいた「駒生布」に一目惚れして即購入してしまいました。そのときに、代々蓄積してきた図案や端切れの見本帖をもとに、生糸から物づくりをされてきたことも伺いました。以来、「紬の橋爪」さんとは単なる取引以上の関係です。佐々木さんにはきもののことだけでなく、一人の女性としての生き方、仕事に対する姿勢など、教えられることは山ほどありました。今では、同じきものを愛する者として、認め合う部分も少なくないと自負しています。
佐々木君枝さんと雪晒しをご一緒させていただいたとき
佐々木君枝さんと雪晒しを
ご一緒させていただいたとき
とにかく今の「すゞし」があるのも佐々木さんの存在あってのことといっても過言ではありません。佐々木さんには、決して足を向けて寝られない、私の師匠です。本当に感謝しています。
 
井上敏江き・ものろーぐ
  展示販売が軌道に乗り始め、仕入先も安定してきた頃、またまた壁にぶつかってしまいました。ギャラリーそのものが借りられなくなってしまったんです。でも、へこたれてはいられません。さっそく物件探しに奔走しました。私は千葉県浦安市で暮らしていますが、いろいろと探した末に見つけたのが、地元の新浦安駅前にある物件。以前は、美容院さんが入っていたそうです。浦安市は近年、人口も増え、マンションや商業施設もできてきて、これからの街。よし!と銀座から引越し、「きもの すゞし」を構えるに至ったのでした。私自身の好みもありますが、きものは夏こそおしゃれで、センスを発揮できますから、夏のきものには力を入れています(店名もそんなニュアンス)。
店としての「地元」ができ、5年が経ちました。その成果を顧客の皆様に伝えたいとの思いで、今秋に銀座で開催する展示会に向け準備中です。銀座のギャラリー時代のお客さまにも、ぜひ再会したいなと思っています。
浦安の現在の店舗
浦安の現在の店舗
とりとめもなく綴ってきましたが、きものは着るだけで満足してはダメですよ。よく何分で着付けができた!といったことが話題になりますが、私はそれが大事じゃないと思っています。着るのに何分かかってもいい。「きれいになるために工夫している時間を楽しむ」ことが大事なんだと思います。
またきものは、日本が誇る伝統文化でもあります。匠の技を継承する織り手は年々減少しており、織りのきものは稀少なものになりつつあります。その素晴らしさをこれからも伝え続けて行きたいと考えています。
「すゞし」は、お客様と共に好きな道を歩んで行きたいと考えているそんなお店です。
一緒にきものを楽しみましょ!
 
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